Addicted to them

ドラマ「ハイロイン(上瘾)」の原作本を、自身の中国語学習のため訳出し、学習記録として残していきます。鋭意、現在進行中。全部終わるまで、はてさて何年かかることやら。 (記事は徐々に鍵付きに移行中。パスはブログ・ツイッターで公開。)

【你就是藥引子(お前は補助薬だ)】

「彼が睡眠薬を2錠服用したのね?」
 グーハイは視線をヨウチーに向けると、ヨウチーは何かを深く考えていて、突然表情が一変した。「そう言えば、バイロインの机の上に薬のようなものがあるのを見た気がする。何の薬だったかまで、注意深く見てないけど。だけど朝来た時風邪引いてるっぽかったから、多分風邪薬だ。」
 学校医は暫くの間精神を集中して考えると、目線をヨウチーの顔に向けた。「ねぇ、その薬を持ってきて見せて。」

 ヨウチーが取りに向かった後、グーハイはベッドに寄って腰掛け、静かにじっとバイロインを見ていた。これまではこんな穏やかな時間はなかった。あらゆる顔のラインがのびのびと開放され、彼を罵ったところで、彼の見ている清らかな夢を邪魔することはできないだろう。
「安心しなさい。彼は大丈夫よ。各項の指標が問題ないことを示しているわ。多分、同時に2種類の薬を服用したから、軽い中毒を引き起こしたのね。目が覚めれば大丈夫よ。以後覚えておいて。初めて睡眠薬を服用するときは、大量に飲んではだめ。1錠で十分よ。」
 グーハイはずっと黙り込み、表情は重かった。ヨウチーが戻ってきて、薬を学校医に手渡した。
「ほら、やっぱ風邪薬です。」
 学校医は頷き、バイロインの額を撫でて優しい声で言った。「点滴をしたから、少し熱が出るかもね。薬の過剰摂取と合わさって、体力低下と強い眠気を引き起こすかもしれないわ。」

 学校医が隣の部屋に去ると、ヨウチーはバイロインの傍に行き、グーハイに言った。「俺が見ているから、お前は戻れ。一人で十分だろ。」
「你回去。(お前が戻れ。)」この3文字の言葉は軽く発せられたが、聞き手が感じる圧力はとても強いものだった。
 グーハイはバイロインに布団をかけた。
 ヨウチーはグーハイの行動を見て、少し複雑だった。他人の目にはグーハイとバイロインは水と油に見えるが、ヨウチーの目にはグーハイはバイロインのことが好きで、それは言わば特別の感情に見えた。彼は自ら主体的に挨拶することはないのに、バイロインに対しては何度も何度も飽きもせずちょっかいを出している。彼は誰に対しても冷淡でも熱心でもないのに、バイロインに対しては尋常でない情熱を向けている。彼はいつも色々手を尽くしてはバイロインを苦しめているが、本当に何か起こった時は、一番に心配している。
 他人には分からないだろう。バイロインは見ても分かっていない。だけどヨウチーはかえって理解できた。

 これは、たとえば恋に芽生えた男の子が好きな女の子を前にすると、どうやってそれを表現していいか分からなくなるのと同じだ。男の子は飽きもせずに女の子の気を引こうとして、おさげ髪を引っ張ったり、ノートを隠したり、目を真っ赤にしていじめる。バイロインとグーハイはどちらも男だが、彼らの関係もまたそのレベルには達していないものの目的は同じである。それは相手の注意を引き付けることだ。
 クラスの中でグーハイが唯一友達になりたいのがバイロインだ。男子が友達になる法則というのはこのようなもので、相手が自分より強いか、自分が相手を素晴らしいと認めるか、自分から率先して相手との結託を図るか。だからヨウチーがいつも言ってるように、グーハイはバイロインを認めている。
 実際はグーハイだけでなく、ヨウチーもバイロインのことを認めている。
 バイロインには独特の魅力があり、それは日が経つにつれてますます濃くなっている。彼は優曇華(うどんげ)[1]の花のようである。花の中で最も沈黙している花であるが、彼の初めての開花のために、人々は一生懸命3,000年も待っているのだ。

「あなたにちょっと薬を出してあげるわ。」学校医の一言で、ヨウチーの想像が中断された。
「何の薬?」
 学校医は優しく微笑んだ。「今回私のところに来るのは大変だったでしょ。いつもは用もなく来ることはないでしょうし。ここにたくさん脳を補う薬があるから持っていきなさい。学校の勉強は疲れるでしょ。毎日脳に栄養を補給してあげて。」
 ヨウチーは学校医を振り切った。「あなたが自分で飲んでください。」
「……」

ーーーーーーーーーー

 グーハイは暫くの間、バイロインをじっと見つめていた。見ていると誰かに似ているような気がしたが、その人の姿は曖昧でぼんやりしていて思い浮かばない。しかしバイロインの鼻と口は、以前から知っているような感覚をグーハイは感じた。
「んん……ゴホンゴホン……」
 バイロインが咳き込み、グーハイの思索を中断した。
「喉渇いた……」バイロインはさっきまで夢を見ていた。夢の中で自分は夸父(こほ)[2]になっていて、止まることなく太陽を追いかけ、追いかけ追いかけ、追えば追うほど喉が渇いて、黄河のほとりに着く前に、喉の渇きで目が覚めた。

 甘くて清涼な液体が口の中に流れてきて、バイロインの唇と舌は十分潤った。手を伸ばしてコップに触ると、誰かの人の手に触れた。掌は大きく力強く、手指の関節ははっきり分かれていた。バイロインはその手の中からコップを抜き取ろうとして、長い間探ってみるも、コップの縁が見つからなかった。
 グーハイはバイロインの動き回る手を押さえると、またコップを彼の口に置き、慎重に水を口の中へ運んだ。
 バイロインはたくさん飲んだので、グーハイの手を押し退けた。「父さん、もう要らないよ。」
 午後中ずっと険しかったグーハイの顔がようやくほころんだ。「遠慮するな。」
 バイロインは違和感を感じてゆっくり眼を開くと、グーハイの顔が見えて、目つきがまた鋭くなった。

「こんなに早く父ちゃんにはなれないな。」
 バイロインは手を伸ばしてグーハイを叩こうとするが、グーハイに強制的に止められた。
「むやみに動くな。手に針が刺さってるんだぞ。」
 バイロインはこの時やっと、自分の手に針が刺され、頭の上に点滴瓶があることに気付いた。
「どうなってるんだ?」
 グーハイは一部始終をありのままにバイロインに伝えた。隠してごまかすことも、後ろめたいこともない。バイロインに睡眠薬を投与したことは1つの真理を追究し、秘められた謎を解明するためであり、その過程において協力しなかったのはバイロインであり、いざという時に鎖を外したのもバイロインだ。
 バイロインはすぐにでも学校医を呼んで自分に『速效救心丸[3]』を処方してもらいたいくらいだった。

「なぁ、教えてくれ。俺はどこでお前を怒らせた?お前に謝るから。」
 そうバイロインは口にしたが、正直うんざりしていた。グーハイは無駄遣いすることができる[4]が、自分はできない。グーハイは破れたベストを次の日に新品に換えることができるが、自分はあのベストしかない。グーハイは怪我をしたら入院できるが、点滴1瓶でバイロインの10日分の生活費を焼き捨てなければならない……。
 グーハイはバイロインの考えていることを察知し、すぐさま話を投げた。
「俺は全ての経済損失を負担できるが、お前を怒らせないなんて俺には無理だ。」
 バイロインは重たい頭を枕にこすりつけて、腹立たしいほどグーハイを睨んだ。
「この野郎。お前はやっぱ気狂いか?」
 グーハイは冷淡な笑みを浮かべた。「ああ、俺は気狂いだ。」
「だったら薬を飲め!」
「お前がその薬さ。」
 バイロインは冷たい目でグーハイを見た。「どういう意味だ?」
「俺を治したいなら、お前は苦しみを我慢すればいい。」
「……」

ーーーーーーーーーー

[1] 優曇華(うどんげ)とは仏教の経典に出てくる想像上の植物。
 三千年に一度、その花が咲くと言われています。

[2] 夸父(こほ)とは中国神話に登場する巨人。
 wikipediaさんによると、「夸父は太陽を追いかけて原野を走り、太陽が沈む谷まで追い詰めることが出来た。しかし、夸父は喉が渇いていたので黄河と渭水の水をすべて飲み干した。それでも渇きが癒されなかったので、さらに北にある大澤という千里四方もある湖に行こうとしたが、その途中で死んでしまったという。」

[3] 速效救心丸。
 「速效救心丸」という漢方薬。日本にもある「救心」と同じようなものだと思います。
 白洛因も顧海の想像だにしない方向からの告白!?に、動機・息切れが気になるお年頃。

[4] 原文では、「顧海折騰得起~(Gùhǎi zhēteng de qǐ)」で、「グーハイは〇〇できるが、自分は〇〇できない」という文なんだけど、この「折騰」には4つ意味があって、
  ① 眠れなくて寝返りを打つ、のたうち回る、転げ回る
  ② ある事柄を繰り返し行う
  ③ 苦しめる、痛めつける
  ④ 無駄遣いする、浪費する
 さぁ、どれだ!?
 点滴中のバイロインは①ができないし、負けを認める!?ことで③ができなくなるし、その後の文を踏まえると④も意味が通る。一応ここでは④にしてみました。
 でも、なぜここでバイロインがグーハイと貧富について嘆いたのかはよく分かりません。グーハイはバイロイン家について、ストーカーよろしく知っているものの、まだバイロインはグーハイ家について知っている・知り得る状況は出てきてない。一般論として思っているのかな?



 第26話。
 以前の尤其の「顧海は白洛因が好きな件」問題について、より詳細な考えが明らかになりました。
 なるほどね。
 ってか、尤其も白洛因のこと気になってる!?(それがLoveなのかは知らんが)
 でも、ダメ。彼はあなたのこと、「イケメンだけど鼻ばっかかんでるティッシュに埋もれたばっちい奴」という評価でしかないから。残念(笑)。
 さて、顧海と白洛因、ちょっと接近。
 「お前がその薬さ。」って個人的には好きだな。
 でも普通は、自分をより高めるとか、自分が素直でいられるとか、そういう役割としての薬(補助薬)だと思うんだけど、もっともっと苦しめ、苦しめば苦しむほど自分は元気になっていく薬って、え~と、顧海はドSを通り越して地獄の使者か何かかしら?
 それはさておき、「君という薬」が「君という光」になっていく過程が、これから始まりそうな予感。
 つづく。





どんな風に周囲に流されたとしても
僕達は変わらずにいようね
幼い愛し方でもいい

馴れ合いとか安らぎなんて言葉で
誤魔化したりしないで
何度でも抱きしめてね
明日は終末(おわり)かもしれないから

君という光 みつけた僕は僕を知る
狂おしく射す
ゆらゆらと波打つ広い海で
一緒に流れていようよ
ほら 何も欲しいものなどない

コメント

 コメント一覧 (3)

    • 1. めいめい
    • July 05, 2020 19:12
    • お前がその薬さ←名言出ましたね😂そして近づいてきた予感😊毎回ありがとうございます😄そして補足がとても勉強になります!
    • 0
      crosuke

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    • 2. めいめい
    • July 05, 2020 19:18
    • お前が薬さ←名言でましたね😂インズのこと大っ好きなグーハイ、キュンとします😊犯罪スレスレ感無きにしも非ずですが(笑)補足がとても勉強になります。ありがとうございます⭐
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      crosuke

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    • 3. ラン
    • July 05, 2020 23:35
    • 「 お前がその薬さ。」というセリフ私も好きです。
      この「 薬」は麻薬、ヘロインにひっかけているのかなぁとも思いました。
      「 君という薬」の摂取が始まってしまいましたね。これからどんどん中毒に…w
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      crosuke

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