Addicted to them

ドラマ「ハイロイン(上瘾)」の原作本を、自身の中国語学習のため訳出し、学習記録として残していきます。鋭意、現在進行中。全部終わるまで、はてさて何年かかることやら。 (記事は徐々に鍵付きに移行中。パスはブログ・ツイッターで公開。)

【我可能真醉了!(本当に酔ったかもしれない)】

 グーハイはバイロインを送っていくと、路地の入口でバイハンチーがちょうど人とおしゃべりをしていた。グーハイとバイロインが帰ってくるのを見ると、すぐに折りたたみ椅子を片付け、目尻に皺を作って笑った。
「ダーハイ、今日もうちで食べていきなさい。帰るんじゃないぞ。」
 バイロインはバイハンチーを睨み、その目が意味するところは明らかだった。こいつは遠慮をするということを知らない。その一言で確実にここで食べていくだろう。
「はい!おじさんにそんな風に言われちゃ、俺も帰るのは気が引けます。」
 思った通りだ!

 バイロインは眉をしかめて、敵意剥き出しで視線をバイハンチーに向けた。
「今日はゾウおばさんの作る料理なんだ。彼を冷遇できないだろ。」
「こいつの分はゾウおばさんに作ってもらう必要はない、父さんが代わりに作ってあげろ。」
 バイハンチーはその場に立って一瞬ぼんやりした。それは誉めているのか?それとも貶しているのか?

 グーハイが台所に入ると、ゾウおばさんは麺を伸ばしていた。太くて大きな麺棒を麺の上で行ったり来たりさせながら押していた。平らに整えた後、数層に折り畳むと、密集して均一になるようにタンタンタンと包丁で切った。その1本1本の太さは同じで、長さもほとんど同じで、手打ちした麵には全く見えない。完全に機械でひいて作ったレベルだ。
「おばさん、あなたの包丁さばきは本当にすごいですね。どのくらい練習したの?」
ゾウおばさんは柔らかく微笑んだ。「練習?20年もご飯作ってれば、誰でも出来るようになるわ。」
「何か手伝いましょうか?」
「結構よ。それより部屋に行って宿題しちゃいなさい。もうすぐ出来るから。」

 グーハイは俎板の上にキュウリが2本あるのを見つけた。一口噛むとシャキシャキしていて、褒めずにはいられなかった。
「おばさん、このキュウリどこで買ってきたの?本当に美味い。」
「これはうちで作ったものよ。後で一袋摘んできてあげるから、お父さんとお母さんに持って帰ってあげなさい。うちのキュウリは農薬使ってないから、安心して食べられるわよ。」
「だったら、後でおばさん家に摘みにいくよ。」

 談笑しながら、ゾウおばさんは既にキュウリを筋状にまっすぐ切っており、小さなカーテンのように皿の上に置いた。傍には炒めたばかりの挽肉ソースがあり、濃厚で軟らかそうな肉がたっぷり入っている。他にも大豆や香椿(チャンチン)、大根の千切りなどが豊富に入っており、皿の上で一緒になると色どりも魅力的で、見ているだけで食欲が湧いてきた。
「おばさん、俺が先に味見しましょうか。」
「いい加減にしなさい。」
 グーハイの箸が麵に伸びる前に、ドアの方から怒った声が聞こえてきた。「手伝いに行ったんじゃなかったのか?働かなければ飯はないぞ。」
 ゾウおばさんはグーハイとバイロインの後姿を見ていると本当に楽しかった。この子たちはどうしてこんなに可愛いのかしら?

ーーーーーーーーーー

 食事の時、グーハイはビールを1杯飲んだ。食事をしながら祖母と楽しくおしゃべりをし、祖母は親友を見つけた。食べ終わるとグーハイを引っ張って何処にも行かせず、庭に生える草を指差して興奮しながらグーハイに言った。「この作物は全部、劉少奇同志[1]が私たちに持ってきてくれて植えたものなの。」
「……」
 バイロインは祖母の手を取り、「お祖母ちゃん、足を洗わないと。さぁ、戻って。」となだめた。
 バイロインが足を拭くタオルを取りに行く隙に、グーハイが引っ張った。
「お前の祖母ちゃんの気持ちは分かるよ。俺に帰ってほしくないだよ。」
 バイロインはグーハイの肩をしっかりと叩いた。「お前の考えすぎだ。」

 庭をぶらついてから、グーハイは祖母の部屋の前へ行き、中の薄暗い灯りをそっと目にした。電球はどのくらい使われているかも分からないほどで、明るさも携帯電話のディスプレイにも及ばない。しかしグーハイはその灯りとその下にいる人を見ていると、突然心の中に温かさが溢れてきた。これこそ“家”というものだ。夜は昼のように明るくあるべきではなく、静かで暗く、壁に映る家族の影は伸びたり縮んだりするものだ。
 祖父は白酒(パイチュウ)を1杯飲んで、この時はもう寝ていて、いびきがグーハイの耳に聞こえてくる。祖母は相変わらずくどくどと話していた。彼女の前には自分の可愛い孫が座っていて、足を揉んであげていた。
 
 グーハイはバイロインがとても冷たいと感じる時もあれば、特有の人情味を感じる時もある。
 彼は人に対して冷たいかと思うと熱かったりもして、遠近がはっきりしている。冷たい時は、頭上の太陽すら相容れないほどに感じるが、たまに熱くなると、心の中にどんなに雪が降り積もっていても一瞬にして解けるほどに感じられる。
 このような人は、いつもあなたの気持ちを掴んで、あなたが進もうとすると彼は後退し、あなたが後退すると彼は振り返っては眺めて、不安にさせるものだ。たとえ彼とあなたが同性で友達であったとしても、その人なしではあなたの生活は不完全になってしまうだろう。
 “麻薬”という言葉以外に、グーハイはバイロインを形容するどんな言葉も思い浮かばなかった。

ーーーーーーーーーー

 バイロインが祖母の部屋から出てきたとき、周りは既に静まり返っていた。時折聞こえてくるのは犬の鳴き声だけだ。ゾウおばさんはいつの間にか帰っていて、庭はとても綺麗に片付けられていた。ビニールシートで作られた風呂場では、バイハンチーが疲れた体を洗っていて、バイロインは自分の部屋へと戻った。
 部屋の明かりが知らない間に誰かにつけられていて、バイロインは部屋に入るや否や呆れ返った。
 グーハイが靴を脱ぎ、自分のベッドで横になっていた。自分の枕に頭をのせ、自分の掛布団をかぶせて、当然のように横になり、少しも違和感がない。

「この野郎、とっとと帰れ!」バイロインはグーハイに向かって足で蹴った。
 グーハイの声がぼんやりと聞こえてきたが、布団から出てきた眼は非常に明るかった。
「酔っ払った!」
 バイロインの表情は冴えない。「少ないだろ、たった1杯のビールだぞ。騙されるか、とっとと起きろ!」
「起きられない!」
「バカにしやがって!」

 バイロインは身をかがめてグーハイを引っ張ったが、彼の馬鹿力でベッドに引っ張り返された。ベッドの木の板はギシギシと音を立て、グーハイは反対の手でバイロインの肩をしっかり掴むと、両足でバイロインを必死に押さえつけた。まるでその目の中に酔っ払った蛇がいるように、バイロインの体の上をくねくねと這い回り、その場でまとわりついては、容易に逃げることができなかった。
 バイロインの体は少し強張った。
 グーハイはバイロインの一瞬のためらいの目線を捕えると、頭を垂らしてバイロインの肩の上に当てた。
「まじで酔ったかもしれない。」

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[1] 劉少奇(Liú Shǎoqí)。
 毛沢東に次いで中国共産党第2位だった人物。文化大革命で失脚し、その後非業の死を遂げた人物。
  



 第49話。
 前回とは打って変わって、すらすら訳出できたぞw
 顧海の酔い、それってビール飲んで布団で暴れたから?
 それとも、バイロインに心酔・陶酔・ラヴのほう?
 意味深w
 つづく。

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. くじら
    • September 20, 2020 00:13
    • 昨日に引き続き翻訳ありがとうございます!

      麻薬が出てきましたね〜。
      今後が楽しみでなりません。
    • 0
      crosuke

      crosuke

      likedしました

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