Addicted to them

ドラマ「ハイロイン(上瘾)」の原作本を、自身の中国語学習のため訳出し、学習記録として残していきます。鋭意、現在進行中。全部終わるまで、はてさて何年かかることやら。 (記事は徐々に鍵付きに移行中。パスはブログ・ツイッターで公開。)

【最特殊的安慰(最も特別な慰め)】

 グーハイはベッドに這い上がると、布団と寝ている人ともども抱きかかえた。「失恋した。」
「あぁ。」
 グーハイは、バイロインが「俺はまだだけどな」的なことを言って煽ってくると思ったが、こんなにあっさりと「あぁ」と言われたことに拍子抜けした。
「俺を慰めてくれよ。あいつらがホテルの部屋でヤッてるところに出くわしちゃったんだよ。」
「あぁ。」
 グーハイはバイロインの手を開いて握ると、一人で横に転がった。顔色は暗く、呼吸は重かった。

 バイロインは寝返り、グーハイの額を手で弾いた。「怒ってるのか?武大郎[1]。」
 武大郎...この呼び名はグーハイをむせ返らせた。お前は俺みたいな背が高くて金持ちの武大郎を見たことがあるのか?
 グーハイは転がってバイロインの体の上に覆いかぶさると、手で首を押さえつけて怒った。「慰めてくれないなら、傷つけちゃうぞ。」
「何で慰めなきゃいけないんだよ。俺にはそんなに傷ついてるようには見えないけど。」

 グーハイの体は徐々に崩れ落ち、頭をバイロインの肩にもたれかけると、傷心した様子で言った。
「悲しくないわけないだろ、3年だぞ…」
「時間を言い訳にするな。」バイロインはグーハイの背中を叩いた。「お前の良心に聞いてみろ?傷ついてるのか?怒っているのか?」
 これについては、グーハイも帰る道すがらずっと考えていた。ジンルールーと男が一緒の部屋にいるのが分かったとき、気持ちはとても憂鬱だった。しかし、この憂鬱さは結局どこから来るのだろう?別れるのが惜しかったのか?胸が張り裂けるほど辛かったのか?どのように形容してもしたりないほどだ。ただ、最も直接的な苦痛は自分の尊厳を踏みにじられたことから来てるに違いなかった。どんな男でもあのような屈辱に耐えることはできないだろう。だから、あの時の気分は怒りによって制御されていたのだ。もちろん、グーハイはバイロインにそれを言うつもりはなかった。

「俺は本当に傷ついたんだよ。」
 バイロインは突然グーハイを押しのけると、自分の上半身を少し起こしてから、頭をグーハイの胸に押し当てた。
 グーハイの鼓動は急に加速した。こ…これはどうしたんだ?俺を慰めてくれてるのか?
 バイロインはすぐにグーハイの体から離れて、頭を枕に戻した。「聞こえた。お前の良心はお前を罵ってた。」
「……」グーハイは力を抜かしてバイロインの体の上に再び覆いかぶさった。弱弱しい声で哀願した。
「慰めてくれ。」

 バイロインは溜息をついて、グーハイの背中を手で叩いた。「大郎や、ほらほらくよくよしないの。」
 グーハイはバイロインの肩に噛みついた。
 バイロインは手でグーハイの首を掴んだ。「お前は犬か!?」
 グーハイは笑った。心のもやもやは、このくだらないドタバタで解き放たれたみたいだった。意地を張った慰めも、ハグされて涙を流すことも必要ない。お前が俺を十分に理解してくれる限り、俺がお前の気付きを感じられる限り、どんな大きな挫折があっても、お互い肩を叩き合えばそれは過去のものとなるだろう。

「明日はゾウおばさんのお店の開店日だ。バイロインは手枕にして淡々と言った。
 グーハイは驚いた。「こんなに速く?準備はもう終わったのか?」
「大体な。明日行ってみようか。」
 グーハイは幸せそうにバイロインの顔を揉んだ。「明日じゃなくて、もう今日だろ。すぐ夜明けだ。」
 グーハイがそう言ったときバイロインはようやく気が付いた。事もあろうか、俺はこいつをずっと待っていたことを……。

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[1] 武大郎(Wǔ Dàláng)
 『水滸伝』に出てくる登場人物。妻が別の男と浮気していることを知り、その現場に乗り込むが、妻と男の返り討ちにあい毒殺される。小心で背が低く風采が上がらなかったので、後世には風采の上がらぬ人の代名詞として用いられた。



 第77話。
 顧海、失恋からのご帰還です。
 次回、鄒おばさんの店開店。ということは、一難去ってまた一難。
 つづく。

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